森雄一の週一エッセイ 第3回「痛みの単位」
25年くらい前だろうか、当時は携帯電話を持っている人はまだ少なく、いわゆる電子メールというものは限られた人間だけが利用していた。いまだスマートフォンを持っていない私だが、当時は新し物好きで、携帯電話も登場と同時に購入した。しばらくしてポケットボードなるものが発売になったのだ。
なになに、携帯電話と接続させて文字のやり取りができる?面白そうじゃん。早速、買ってみた。やり取りできる相手は限定されるものの、小型のキーボードで文字を打ち込むのが楽しく、いつもバッグには携帯電話とポケットボードをセットで持ち歩いていた。
ある日、差出人不明のメールが届いた。チェーンメールと謳っており、これを受け取った人は他の誰かに転送しなければならないという。文字を追ってみると、ふむふむ、痛みの単位が確立されたとのこと。重さ、距離、重量など、いろいろな単位がある中で、確かに「痛み」を測る目安はなかった。痛いか、そうでないか、どっちかだ。もし、痛みの単位があれば、どれほどの痛みなのかが分かるし、相手にも伝えられるわけだ。それは世紀の大発明なのではないか。いや、大発見なのか?
ポケットボードはディスプレイが横長で、表示されるのはたったの数行。痛みの単位とはどんなものか、早く知りたい。メールを読み進めると、そこには、世界のどこぞの研究者が長い年月をかけて痛みの単位を考案し、実験を重ねて世界に発表したという感じになっていたと思う。その実験方法がユニークだった。なんと、鼻毛を抜いた痛みで測ろうというものだった。
人間の体には様々な箇所に毛が生えている。頭からつま先まで、ありとあらゆる場所にだ。想像がつくように、どこの毛も無理やり引っこ抜いたら痛い。その中でも、鼻毛を抜く痛みは筆舌に尽くしがたいものがある。試しにやってみるといい。初めて抜いた人は、思わず涙ぐむことだろう。つまりは、だ。
「1」が普通の痛み。「2」は2倍の痛み。「3」は3倍?おいおい、「1」で十分痛いのに2倍も3倍もあるか。メールを読み進めるとだんだん腹が立ってきた。そんな痛みの単位なんぞいらんわ。ここで、あなたは疑問に思ったはずだ。
「肝心の単位は何?」
もっともである。それは、「hanage」だという。外国人が定めたのだ。ヘンジ、ヘインジ、ハンエイジ、何と読むのだ!どうやら、メールも最後の行のようだ。
hanage=鼻毛と読む。
毛っ、だまされた(笑)。