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2019年9月 6日 (金)

森雄一の週一エッセイ 第19回「マイ・マイ・マイ」

「マイ〇〇」というものが、盛んにもてはやされた時代があった。

マイ箸、マイボトル、マイバッグなど。変わり種では「マイ七味」

なるものも。オリジナルの七味唐辛子を持ち歩くというものだった。

既製品を購入するのが一般的だが、七味唐辛子をブレンドする店が

あるのだ。私はデパートで開催された物産展で購入したことがある。

普段使いの愛用品を持ち歩くというのは、不思議なことのようで、

実は、自己満足と同時に環境に優しくありたいという気持ちの表れ

という一面もあり、他人(利用する店舗)に負担をかけさせないという、

自然な思いやりが形になっている側面もある。極端な例ではあるが、

旅行に自分の枕を持ち歩く人もいるのだから、これでなくちゃダメと

いうものも、人によってはあるのだ。

 

私はマイ箸とマイタンブラー、マイバッグは実践し、マイバッグは

完全に当たり前のものとなっている。販売店側はレジ袋消費を減らす

ことができ、経費節減でエコにもつながるわけだ。本や雑貨を購入し、

「そのままでいいです」と店員に告げるときの気持ちよさよ!

「ありがとうございます。」

店員がその一言を口にすると、その場にいい空気が流れる。マイバッグ

一つを持ち歩くだけで、小さな幸せが生まれるのだ。

 

ところで、中学生のころ(35年も前じゃ~)、所属のサッカー部では

ゴールキーパーだった。ボールがゴールラインやサイドラインを出ると

どちらかのボールになるが、自チームの場合、マイボールという。

ゴールキーパーは常に声を張り上げるので、鬼の首を取ったように、

「マイボール!」と高らかに宣言するのだ。もちろんサッカー解説を

聞いてもマイボールと言っているのが確認できる。サッカーは11人で

行うスポーツなのだから、アワー(our)ボールという考え方もできるが、

俺のだ!と主張することはスポーツマンとして至極当然なのかもしれない。

 

時に日本語と外国語を組み合わせて、世にも不思議な言葉が出来上がる。

「マイ(私の)・箸」は、日本人だから理解できるもので、外国の人が

聞いても一瞬、理解できないことだろう。マイ・チョップスティックス、

字面を見るとプロレスの技みたい。「マイ七味」も外国人には通用しない。

一方、こちらはどちらも英語なので違和感なし。「マイ・バッグ」。

男っぽく、マイ=俺の、と書くと、「おっ!」と反応する人はいるだろう。

ちまたで人気の「俺の」系飲食店。甲府には「バル」や「串かつ」などが

あるようだ。女性にはベーカリーが人気だそうで、高級食パンなのに

売れまくっているようだ。俺の、なんて男臭プンプンなのに・・・・

いや、だからいいのか。そういえば、男と名の付くもので「男前豆腐」と

いうのも流行ったものだ。

 

俺の、私の、僕の、自分の、すべて英語では「マイ」。自分が自分がと、

自己中心派は、時に人に嫌われるものだ。ビートルズ最後のアルバム

「レット・イット・ビー」に収録されている1曲で、俺が、俺がと連呼

する「アイ・ミー・マイン」という曲がある。ジョージ・ハリソンが

作っており、当時、不仲だったポール・マッカートニーを揶揄する曲

だとされていた。真実はどうであれ、そんな不満をアートにできるのも

大きな才能だ。いずれにしろ、常に自分が中心にいようとすれば周りから

煙たがられそうなものが、現代では「マイ」、つまりは「俺の」と、

さりげなかったり、自信満々でのぞめば認められる世の中のようだ。

 

先日、写真入りのマイナンバーカードを作成し、ちょっと嬉しい

モーリーなのであった。

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