森雄一の週一エッセイ 第22回「修学旅行、昔と今」
先日、中学三年生の息子が修学旅行に行ってきた。奈良と京都。
東京発としてはオーソドックスなルートだと思う。東京を起点
に考えれば、新幹線や飛行機を使って、短期間に遠くまで行け
そうだ。
私が中学生の時は1980年代初期だからちょうど東北新幹線が
通ったタイミングだ。だからといってみんながこぞって東北に
行ったということはないと思う。40年も前のことは何の参考
にもならないが、私の通っていた東京・杉並区のとある公立
中学校では、修学旅行先は「奈良・京都」or「広島・岡山」と
決まっていて、交互に行っていると当時の先生から聞いた。
高校は私立高校だったが、毎年、行き先が変わると言っていた
ような気がするが、いずれにしろ、私は中学でも高校でも広島
だった。往復の交通は新幹線で、現地では、基本的に団体での
バス移動。高校では班行動でそれぞれが行き先を決められ、
山口にて、自転車で萩に出掛けたものだ。
では現代の一例として、東京の公立中学校に通う息子のケース。
を見てみよう。行き先は、奈良と京都。二泊三日には驚いた。
それぞれ一泊ずつという、私の印象としては弾丸ツアーだな。
往復で一日使うわけだから、それぞれの地で8~9時間程度の
行動時間しかない。大きい荷物はあらかじめ初日の宿泊先に
送っておく。これが第一の驚きだ。着替えなど、かさばる荷物
は事前にバッグに入れ、学校経由でトラックにて宿泊先に輸送
するという。出発が平日ということを考えると、通勤時間帯に
中央線で東京駅まで行くのだから、乗客へ迷惑がかからない
ように最低限の荷物にするのは賢い選択なのかもしれない。
第二の驚きは、新幹線が修学旅行専用列車だったこと。一般の
利用が多い新幹線に修学旅行生がお邪魔すると思っていたが、
どうやら違うらしい。調べてみると、昭和40年代から新幹線
にはそのような措置がとられており、ということは、私が過去
2回利用したときもそうだったのか。これはまったくの、私の
勘違いなのかもしれない。いずれにしろ、呉越同舟、共同戦線、
一蓮托生・・・・違うか?
息子に聞くと8校の生徒が、同じ京都を目指して同乗したとか。
帰りも同様で、京都発、東京着で、同じように複数校が乗って
いたようだ。東海道新幹線は、東京か新大阪から出発するもの
と思っていたが、京都発というのがあるのか。JRやるな。
第三の驚きは、班ごとにスマートフォンが支給されたことだ。
個人持ちのスマホは持参不可。代わりに学校が支給。ふ~む。
森家への配慮だな。我が家は子どもにケータイは持たせていない。
連絡はメールが基本で、電話は極力しないようにという指導が。
息子は不運にも班長で、使ったこともないスマホを持たされ、
メールが上手に打てずに非難ごうごうだったとか。
何はともあれ、無事に帰ってきたし、学校全体でもトラブルは
なかったようで、親としては何よりだ。私の修学旅行は昭和で、
息子は令和。平成が抜けてしまったが、新しい時代を迎えても
旅行先が変わらないというのは、安心する一方で、なぜなんだ
という疑問もわいてくる。奈良・京都は日本の歴史に触れる旅。
広島・長崎は戦争の悲惨さを学ぶ旅。東京は日本の都市を体験
する旅。大きく変える必要はない。今の日本をしっかり見せる
旅をさせてあげてほしい。
願わくば、不登校や体調不良、様々な障がい等で参加できない
子に、現代ならではのVR等を使った修学旅行体験をさせて
あげられるような技術が進むことを願うばかりである。