森雄一の週一エッセイ 第17回「りょう想い」
考えてみれば、それはすごいこと。地球上にいる男は35億人。
パートナーとなる女性も35億人。それほどいても、人生で
出会える人は限られている。しかも両想いになれるのは奇跡!
・・・こんな話は結婚式会場でよく聞くものだ。一方、35億人
もいるのだから、いつか両想いになれる人と出会えるだろうと
いう楽観的な考え方もできる。
私の初めての両想い体験は中学生の時。彼女(仮にAちゃんと
する)とは3年生から6年生まで同じクラスで、同じ中学校に
上がり、中1、中2が一緒と、長く同じクラスで過ごした仲間で
ある。それほど意識していなかったはずなのに、中3になった
ある時、Aちゃんの親友2人から放課後に呼び出され、教室で
3人と、不思議な雰囲気に。
「ゆうちゃんの好きな人は誰?」
まあ、ストレートな質問だとこと。答える理由が見つからず、
適当にはぐらかしていると、2人は矢継ぎ早に同学年の女子の
名前を挙げていく。
「〇〇は?」
「違う。」
「△△は?」
「・・・・違うけど。」
おいおい、いつか正解が出るじゃないか。
「Aちゃんはどれくらい好き?」
質問内容を変えてきた。最初からそれが聞きたかったのだろう。
と、誘導質問に引っ掛かり両想いであることが発覚。悪い気は
しなかったが、以降、卒業までしゃべりづらくなったことは
言うまでもない。
男女交際はどちらかが告白し、それに応える形で交際が実現するわけ
で、最初から両想いということは少ないのかもしれない。しかし、
結果が同じなら過程はどうでもよい。なぜなら、今が大切なのだから。
現在放送中のTVドラマ「だから私は推しました」がとても面白い。
ひょんなことで、興味のない地下アイドルと出会い、でも惹かれて
いくアラサー女子のオタク生活。女同士の惹かれ合いはこんな
感じなんだ。男はどうだ。キャラクターとの相性で語れそうだ。
日本の昭和アニメ&キャラクターは非常に完成されたもので、
平成、令和と時代が変わっても人気が落ちることはないようだ。
ドラえもん、ゴジラ、ウルトラマン、仮面ライダー等、いかが
だろうか。ん?一つ忘れてるって?そう、機動戦士ガンダムだ。
1979年以来、今年で40周年を迎える人気コンテンツ。いまだに
TVアニメ、映画、ゲーム、プラモデル、イベントなど、話題に
事欠かない。先日、最初の劇場版を上映し、音楽をオーケストラ
の生演奏で表現するシネマコンサートなるものがあり、司会を
任された。ステージに立つと、満員のお客さんの9割は、リアル
タイムでいわゆるファーストガンダムを見てきたと思しき男性。
一人客が多い印象だった。生みの親、富野由悠季氏はこう言う。
「アニメが劇場で見られる当たり前の時代。その流れを作った
のはあなたたちだ。アニメ隆盛の時代はあなたが作ってくれた。」
制作側は、若い人向けのガンダムコンテンツも作る一方、往年の
ファンを決して忘れない。これが、男と男のりょう想いだ。
ファンの喜ぶ顔が見たい。青春の一ページに今一度戻りたい。
こんな相思相愛が、生活を、心を豊かにする。