森雄一の週一エッセイ 第16回「しゃぶりつくす」
「食べつくす」よりも「しゃぶりつくす」の方が伝わりやすい。
そう思って、今回はあえてこのタイトルにした。
空き時間につい投稿動画を見てしまうことはあるもので、スマホを
持たない私でも、パソコンを使っていて動画サイトを立ち上げ、
見てしまうものの一つが「大食い動画」である。動画を公開する
のは若い女性が多いようで、ルックスと大食いのアンバランスさが
人気の秘密のようだ。
この値段で、このボリューム。コスパ高い・・・高すぎだろと
思うものの、誰でも同じようにとはならない。でも、2,000円程度、
いわゆるテラ盛り系を完食できたとしても、おなかを満たすだけの
ことならワンコインで事足りる。じゃあ500円で妥協するのか。
否!
2,000円のテラ盛りを食すのならば、それなりの楽しみを見つければ
いいのだ。他人からの視線、たっぷりの食事、満たされすぎる腹、
1,500円プラスするだけで人生をより充実させることができるのだ。
私の認識する限り、「タイタニック」という映画で、わざわざ何度も
映画館に足を運ぶ人が続出し、リピーターと呼ばれるようになった
記憶がある。最近では「君の名は。」、「ボヘミアン・ラプソディ」
などがそうで、少し待てばブルーレイ等が発売されるのだから、
パッケージを購入する、つまりは最低限の支出で、心行くまで自宅で
たっぷり味わえるのだ。これってコスパが高いということではないか。
ここで、コンサートと映画で比較してみよう。歌手・安室奈美恵の
ファイナルツアー(2018年)のチケットは税込み9,800円だった。
それを収録したブルーレイの値段は税込み8,800円。ほぼ同額である。
一方、京都アニメーションが制作した水泳アニメ作品、「特別版Free!
-Take Your Marks-」(2017年)ブルーレイの値段は、税別で7,800円。
映画観賞は、通常で大人1,800円であることを考えると、パッケージが
高額であると感じてしまう。つまりは「コスパが低い」と。しかし、
コンサート、映画、ともにパッケージには、本編以外にいろいろ特典が
あるのを忘れてはいけない。購入店舗ごとにもらえるグッズが変わって
きたり、Free!については私は購入したので詳しく見てみると・・・・
・映画の台本(これ、まぢですごいんですけど)
・特製のデジパック(イラスト入りのプラスチックジャケット)
・描き下ろしコレクションカード(同様のカード等6枚入り)
・映画解説ブック(小型のパンフレットだ)
・イベントチケット優先申込み券
などが、パッケージを開けて手にすることができるアイテム類だ。
ディスクをハードに挿入してみよう。トップ画面でスペシャルとある。
そこを開くと、予告&CM、ノンテロップオープニング&エンディング、
アニメキャラクターによる舞台挨拶映像、声優舞台挨拶映像といった
特典映像が81分もあるのだ。本編は108分だから、それに匹敵する
くらいのボーナス映像があることになる。それだけでは終わらない。
同トップ画面でオーディオ設定もできる。ここはあまり気にする人が
いないかもしれないが、今日のタイトルである「しゃぶりつくす」
ためには、ここに気づけなければダメだ。
音声を2.0ch、5.1chと選択でき、ヘッドフォンで推奨する視聴モード、
さらにオーディオコメンタリーといって、キャストや製作スタッフに
よる解説や雑談を聞くことができるのだ。対象画面でのこぼれ話、
声優のアフレコの様子、技術屋が語る映像へのこだわり等、目では
本編を追って、耳では新しい世界を体験できる。件のFree!では8人の
声優によるリレートーク、監督やキャラクターデザイン、演出、色彩
担当者などによるトータル10人のリレートークで、2パターン用意
されている。他にも字幕をあえて入れてみたり、時間はかかるが、
何度も、様々なアプローチで楽しめるのだ。
洋画では、各国言語の字幕、吹き替えありorなし、作品によっては
監督や出演者がこぞってオーディオコメンタリーに出演し、ご丁寧に
字幕まで付いているものもあるなど、こちらも楽しみ方は多彩。もし、
パッケージそのものを格安で購入できたなら、ぜひしゃぶりつくして、
これぞコスパ最強という楽しみを追求してほしい。