森雄一の週一エッセイ 第15回「最強の武器」
8月2週目は朝からみんな笑顔だった。感動で泣いた人もいたよね。
それでも朝の時間はどのお宅でも戦場だ。タラタラしてんじゃね~よと、
背中を蹴られて「行ってきま~す!」となったお父さんも多いはず。
渋野日向子、この名前を見るだけでニヤニヤしてしまう。なぜか日向子
という並びが「スマイル」に見えるから本当に不思議だ。
42年ぶりにゴルフ界で偉業を成し遂げた20歳の女の子。ギャラリーと
ハイタッチし、暇を見つけてはお菓子をもぐもぐ。真剣な表情でクラブを
振り、結果にとびきりの笑顔を爆発させる。なんだ?このどうしようもない
くらい素敵なこの子は。
笑顔が世界の共通言語だということは、高橋優の「福笑い」で学んだと、
第2回のエッセイでも残した。改めて、笑顔を意識すると、他の人に
伝染するのだということが分かる。
笑うことと笑顔でいることは似て非なるもの。結果は同じかもしれないが、
英語でいう所の、「笑う=Laugh」、「笑顔=Smile」ということだろうか。
私はどちらかというと、笑うことよりも笑顔でいることの方が得意だ。
脇をくすぐられたら声を上げて笑うと思う。でも、最近はバラエティや
動画を見ていても笑うことはほとんどなくなった。自分なりの解釈では、
お笑い芸人や番組そのものが笑えるようなものがないと思っているが、
実際は、笑う余裕がないほど疲れているのだろう。営業用のスマイル、
そんな呼び方もあったり、芸能界では普通に見られる光景だ。でも、今は
アイドルに会いに行ける時代。ゴルファーとハイタッチできる時代(笑)。
そんな営業スマイルはすぐに見破られることだろう。だからこその、
シンデレラスマイルだ。皆が知る童話のシンデレラから取っていて、突然、
幸運を手繰り寄せる人のことを言う。シンデレラボーイとも言うから、
別にシンデレラ=かわいい、とかそんな意味はないわけで、スマイルが
幸運を手繰り寄せたのだから、渋野選手は気にすることなく胸を張って
シンデレラスマイルをこれからも見せてほしい。
スマイルですぐに思いつくのは、マクドナルドの「スマイル=ゼロ円」。
わざわざ「スマイルください」というお客もいるようだが、サービス
そのものの発想は素晴らしいと思う。あって当然、できて当然。だって、
それをわざわざ求める人もいるのだから。冷やかしであろうと、それが
商品としてメニューにある限り、マクドナルドは笑顔にあふれるお店で
あり続けるだろう。笑顔は伝染するのだから、店側が笑顔でいれば、
自然に客たちも笑顔になれる。
苦い記憶を引っ張り出そうか。学生時代、浅草のとあるレストランで
アルバイトしていたが、自分に向いていると張り切って配膳していた。
とはいっても、緊張の連続でなかなか笑顔が出せない。しているつもり
でも、相手には伝わっていなかった。そのうち、食事の乗ったお盆ごと
お客の下半身にぶちまけてしまい、店長からは裏に回れと怒られた。
皿洗いに、水を用意するくらいの仕事しか与えられなくなり、間もなく
そのレストランは辞めた。今思えば、裏方でも腐らず笑顔で続けていれば
何かが変わったかもしれないなあ。
くだんの渋野選手は突然現れた時の人だけに、私にとっては初対面から
して笑顔。今後、挫折や苦悩もあるだろうが、その度に笑顔について
言及されることだろう。でも、考えてみてほしい。我々は日々の生活の
中で、笑顔になったり、笑ったりすることは多々ある。周りを笑わせて
場を和ませた。先輩のプレゼンが素晴らしく、笑顔でいたら、上司まで
微笑んでいた。店員さんの「ありがとうございました」という笑顔に
ハッとする。その笑顔に会いたいがために、明日もここに来よう。
鏡を見て上手に笑顔が作れないのなら、周りの笑顔を教材に、自身の
笑顔革命をしてみようじゃないか。だって、「笑顔」は、誰もが持てる
最強の武器なのだから。
このエッセイがアップになっているだろう8月8日はエフエム富士の
開局記念日だ。同時に、笑い声の「ハハ」からスマイル記念日でもある。
これからも、放送を通じてあなたを笑顔にしたい。