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2019年7月11日 (木)

森雄一の週一エッセイ 第11回「待ち焦がれる」

東京・新宿の待ち合わせのメッカ「新宿の目」が傷つけられた。このニュースに

驚いたのは一定の年齢以上の人だろう。4~50代以上か?現代の若者に

「新宿の待ち合わせ場所は?」と聞いても、「新宿の目」と答える人はどの程度

いるのだろう。

新宿駅西口の地下部分に突如現れる大きな「目」。ビルの名前はスバルビル。

ガラスでできたその「目」は、待ち人を見つめるかのようにそこからじっと動かない。

いや、実は動く。待ち人を見つめるというよりも、辺りを監視するかのようだ。

光ったり動いたり、まさに新宿西口の象徴。

 

東京に限らず、どの街にも待ち合わせポイントがあるものだ。駅の改札前は

定番中の定番。昔はここに伝言板というのがあったものだ。スルーすることが

できないのは、渋谷・ハチ公、池袋・いけふくろう、新橋・蒸気機関車前等、

とても有名で、誰もが見つけやすい。逆に、大勢の人の中から待ち人を探す

のに苦労することも。小説の中に出てくる待ち合わせシーン。歌の歌詞にも、

待ち人を想う表現があったり、人が出会うことはドラマティックである。

 

遠くに待ち人を見つけ、笑顔で手を振る。それだけで十分、絵になるし、想像

するだけでこっちまで笑顔になる。人を待つというのはそういうことなのだろう。

現在、放送中の朝の連続ドラマ「なつぞら」。戦争で離ればなれになった兄妹

3人が、徐々に昔を取り戻すかのように引き寄せられる。会えて涙、会えなくて涙。

待ち合わせ場所はそれぞれが作り出していき、引き寄せられていく。

恋人に置き換えてみよう。告白され付き合うことになった彼氏とデートするため、

待ち合わせ時間より30分以上早く到着した彼女。付き合い始めは受け身でも、

いつの間にか完全に彼のとりこになっている。文字通り、fall in love、恋に落ちた。

30分も早く到着し何をするのか?現代の人ならそう思うはず。これから好きな人と

会えるのだ。会ってから、何を話そう、どこへ行こう、手はつないでくれるかな、

もしかしてお部屋に・・・・

この、想像力を巡らせるには30分でも足りないかもしれない。それくらいに

2人の様子を想像したり、自分を恋愛小説の主人公にして妄想したり、時には

ニヤけてしまったり、何度も腕時計を見てしまうくらい、待ち時間は、大事なもの

だったのだ。

 

今は「暇つぶし」ツールが充実していて、「待つ」という行為そのものが苦では

なくなっているとようだ。でも、待ち人中にはもっと相手を考える時間にしては

いかがだろうか。異性に限らず、友人に対しても、これまでの相手との関係を

振り返ったり、今日はどんな報告をしようかなど、そう考えながら待ってみると、

ツールに頼らなくても楽しい時間になりそうな気がしないか?11_013

私は「焦がれる」という言葉が好きだ。異性を想う気持ちや、あこがれなどを

持った時などに使う。想い焦がれる、待ち焦がれる、などと使われると、その

表現を目にするだけで胸熱になる。中学生の時にラジオから聞こえてきた

ギターのイントロに惹かれ、やがて大好きになった、38 Specialのヒット曲

「Caught Up In You」邦題は「想い焦がれて」。文字通りに訳すと、あなたに

捕えられる(汗)、それを意訳すれば「君に夢中さ」というわけだ。文学的な

表現のタイトルになるのは歌詞に秘密があるのだろうし、興味が沸いたら

調べてみたらいい。

 

久しぶりに、待ち焦がれるような「待ち合わせ」をしたいと思わないか?