森雄一の週一エッセイ 第8回「ちょうどいい距離」
我が家に松岡修造さんがやってきてもう4年。毎日、笑顔だったり、
真剣なまなざしを向けて含蓄のある言葉を投げかけてくれている。
そんなお宅は多いかもしれない。そう、これは「まいにち、修造!」だ。
日めくりカレンダー形式になっていて、1日から31日まで、日付が
変われば1枚めくり、修造節を受け止めることができるのだ。表紙には、
「心を元気にする本気の応援メッセージ」、そう書かれている。例えば
どんな言葉があるのかというと、
「考えろ!考えるな!」
「自分を持ちたいなら、サバになれ!」
「『喜怒哀楽』僕はニンゲンと読む」
「次に叩く一回で、その壁は破れるかもしれない」など。
確かに熱い、厚い、暑い!熱いぞ、修造兄!現役時代も数々の
功績を残したテニスプレイヤー。現在はスポーツ解説者として、
様々なスポーツの魅力を、持ち前の表現力で伝えてくれている。
しかし、だ。
時に、熱すぎる対応が人を冷めさせることもある。ネット上に見受け
られる「元気の押し売り」との言葉。全員が全員そう思うわけではないが
そのイメージが先行してしまうと、不思議なほど伝染するのである。
ネット検索では、圧倒的にタレントのベッキーさんが挙がる。WANIMA
やFUNKY MONKEY BABYSなど、音楽界でも、強いメッセージや
元気キャラが定着していると、同様の扱いになることがある。大丈夫さ、
僕がいるよ、やろうぜ、声を出せ等、背中をぐいぐい押してくれる。
いいじゃないか、周りを気にせず一直線のメッセージを発信できる人は
リーダーたる素質があるし、実際、そういう人がいると助かることは多いと
思う。肝心なのは距離ではないだろうか。
その人が家族なら毎日そばにいるわけだから、その熱い空気を常に
感じることができる。一方、クラスメイト、勤め先の同僚、バイト先の先輩
なら適度な距離を保てるから、必要な時に力になってもらえるだろう。
自他ともに認める熱い人は、たいていの場合、その地域の有名人だ。
お店なら看板娘、企業なら会社の顔、家族なら自慢の息子(娘)。
元気な人は、態度に裏表がない。声が大きくてわかりやすい。肝心な
時に力になってくれる(希望的観測)。元気の押し売りがイヤなら、
距離を取ればいい。必要な時に近づき、不要なら離れればいい。
リーダーたる人はそれをわきまえているから、歩み寄る人をとことん
導くはずだ。
元気の押し売りでも、売りは売り。おもわず買ってしまう人もいるわけだ。
押して押して売る、に対して、引いたのに買っちった、ってとこか。別に
お金を出したわけでもないだろうし、受け取ってしまえ!
人間、時には落ち込んだり、食欲がなかったり、失恋したり、テストで
赤点取ったり、ケンカをしたり・・・・・あるだろう。そんな時こそ、売られた
言葉を思い出せば、ほら、その瞬間に、買ってよかったと思えるはずさ。
なので、買ったものを忘れてもいけない。離れすぎるような距離をとっても
ダメなんだ。
あ、気づいたら、今の発言って・・・・・・押し売りしてる?