鉄ちゃん道、どう?~鉄道と音楽~
かつて新幹線や特急に乗ると、「鉄道唱歌」が流れてきたものです。
「さあ、出発だ!」という気分にしてくれます。
明治33年に発売されたこの曲、大正時代に入るまで、長く愛された唱歌です。
当時、レコードやカセットがない時代で、楽譜にメロディが書かれ、
歌詞が何番にも渡って書かれたもので、全6集、合計で374番まであったという、
全部歌ったら果たして何時間かかるのだろうと、気が遠くなるような楽曲です。
鉄道をモチーフに作られた楽曲は世界各地にあって、
クラシックの世界でも、ヨハン・シュトラウス2世による「観光列車」や、
オネゲルの「パシフィック231」など、特定の列車をあらわすような楽曲、
日本でも「汽車ぽっぽ」のような童謡を始め、アメリカの民謡である「線路は続くよどこまでも」、
ポピュラーソングでも「あずさ2号」、「Choo Choo Train」といった、
今でも歌われる鉄道ソングは数多くあります。
鉄道ソングは、旅立ちや別れの歌として作られることが多いように思います。
特にJRが国鉄時代にCMソングとして大量にオンエアーした、山口百恵の「いい日旅立ち」と、
JRになってからはTOKIOの「Ambitious Japan」、この2曲は特別な存在です。
「いい日旅立ち」は、1978年の曲ですが、
国鉄の旅行誘致キャンペーンソングとして親しまれました。
カバーされたバージョンも数多く存在し、カラオケや結婚式の場でも歌われることが
いまだにあることから、もしかしたら、鉄道唱歌以来の最大の鉄道ソングかもしれません。
一方、2003年にリリースされた「Ambitious Japan」は、
当時のJR東海の社長が、作詞家のなかにし礼さんに依頼した経緯もあり、
東海道新幹線の車両にも「Ambitious Japan」とプリントされ、
2003年から2年間キャンペーンは続きました。
飛行機や船、バスなど、数ある公共交通機関の中でも鉄道ソングは、
群を抜いて多いわけですが、
これには、日本人の鉄道への特別な感情のようなものがあるからかもしれません。
通勤、通学で毎日のように利用する一方、旅行でも使用頻度の高い鉄道。
いろんな想い出の舞台になりうる駅。
他にも、車両のバリエーション、時間の正確性、エキナカの魅力など、
ただそこにいるだけで楽しいのが駅ですね。
さて、現在は、JR、私鉄共にほとんどが電化され、いわゆる「電車」が多いのですが、
電化される前は蒸気機関車が牽引するような汽車が各地を走っていました。
レトロ車両の代表格でもありますが、イルカの「なごり雪」の歌詞にある、
「汽車を待つ君の横で、僕は時計を気にしてる」とか、甲斐バンドの「最後の夜汽車」では、
「君が乗った最後の夜汽車が、僕の街を遠ざかる」、堀内孝雄の「遠くで汽笛を聞きながら」では、
汽笛がタイトルに入っているように、蒸気機関車をほとんど見かけなくなっても、
旅立ちのキーワードとして「汽車」というのは、歌そのものを美しく彩っていると思います。
ご当地ソングとしての鉄道ソングも見逃せません。例えば、The Boomの「中央線」。
ボーカルの宮沢和史さんが山梨出身だらこそ生まれたわけですが、
路線名がそのままタイトルになるというのも面白いですね。
演歌では、「五能線」、「磐越西線」という楽曲もあります。
アーティストが鉄ちゃんだったから生まれた曲もあります。
1999年のスマッシュヒット、スーパーベルズの「Motor Man」。
車掌が車内放送で乗客を盛り上げるというユニークな内容で、
鼻にかかったような独特のアナウンスはもちろん、
面白おかしく駅名を連呼するところは一度は真似したことがあると思います。
この曲を作ったスーパーベルズの野月貴弘さんは鉄道ファン。
ボーカルユニット、Rag Fairのメンバー、土屋礼央さんも鉄道ファンとして知られています。
そんなRag Fairには、「Magical Music Train」というタイトルのアルバムがあります。
そして、くるりのフロントマン、岸田繁さんも鉄ちゃんです。
くるりの楽曲にも、歌詞の中に鉄道が多数登場したり、
タイトルにも鉄道が出てくることがあります。
そんなところに目を付けたのが、京浜急行電鉄で、当時の京急の社長が、
岸田さんと同じ京都出身ということも依頼の理由にあったようです。
京浜急行電鉄の歌を作ってほしい。
その願いを叶えたのが、シングルヒットにもなった2005年のナンバー「赤い電車」です。
鉄道にまつわる楽曲が、発車メロディとなって息の長いヒットにつながることもあることから、
鉄道と音楽のつながりは今後も大いに盛り上がっていくことでしょう。
旅情をそそる要素として欠かせなかった「鉄道唱歌」から、
今やご当地ソングや、企業とのタイアップとしても、
音楽と鉄道の世界は深く関わっていくように思えます。
あなたも、一度、お持ちのCDをチェックしてみてください。
タイトルや歌詞に鉄道関係のキーワードがあるかどうか、
探してみるとゴロゴロ見つかると思いますよ。
今回は主に邦楽を取り上げましたが、洋楽でも一度、調べてみたいですね。